日本語版『林語堂全集』を目指して

「発掘」と「密告」


 三月十八日、中華民国「府院合署」が臨時執政府となった。愛国青年による外交請願行動があることを事前に知ったことから、密かに準備を命じて、銃を担ぎ弾薬を込めた隊伍を埋伏させ、府院合署の国務院の門前において、官長の指揮のもとラッパを鳴らして指令を実施し、国民を銃撃した。これに加えて刀剣と鞭によって続けて追撃し、最後には略奪を行った。もしこのような経緯が暗黒の君主時代に起きたなら、暗君暴主でよほどの傲岸不遜でもない限り、事後に過ちを認めて反省し、慌てふためき驚愕する様を装うことで、事前には知らなかったことを示し、天下の耳目をことごとく覆い、自己の罪状を塞ぐことを切望するものである。ところが、こともあろうに執政の傍らは、いまだこの世に羞恥があることを知らない異端の作家によって包囲されている。李彦青による曹錕の包囲はさらにひどく、その日のうちにくだらない戯言を発し、自ら罪状を認めて供述し、堂々たる民国国務総理と総長をして公然と公文書を利用し、署名押印して大嘘をまき散らす。嘘をまき散らすことについて、西洋においていまだ礼教の恩沢に浴していない庶民は、この世の中にとって絶対的に恥ずべきだと知っているが、「必ずよって立つべき場所がある」吾らが国家においては、少しくらいまき散らしても構わない。しかしながら、構わないことには構わないが、単純に官僚の手段という視点から見た場合に、すでにあまり優れているとは言えない。李彦青・曹錕と章士釗・段祺瑞の居場所を入れ替え、また決して「車旁軍」の間抜けとはならない。これは「我が執政」たる老先生の心を痛めずにはいられない。去年、「清廉な君側」である馮玉祥は、またあのモンゴルの某都市に四十台もの車両を終結させ、夫人とともに留学に出発した。結果としては、「暗愚」と「我が執政」が毎日あちらで叩頭の挨拶を行い、顔を洗うたらいを手に持ったため、「君側」は清廉ではなくなってしまった。ああ! たとえ「東洋文明」に「維持」すべき必要があり、「社会道徳とそれを守る人の心」が「救出」されるべきものであったとしても、それは決して幾人かの女遊び・賭博に興じる文人や目隠しをして鬼ごっこをする孝子、廉恥心を尽く喪失した皮膚病の虎によって「維持」されたり、「救出」されたりするものではない。


 いわゆる官僚の手段という視点から見た場合に、あまり優れていると言えないというのは、つまり、馬脚をあまりにも露わにし、世間に醜態をさらしてしまい、そのために我らに手がかりを掴まれてしまい、周樹人先生に「発掘を広げる」の文章を書かせることになってしまうからである。もし我々がこの発掘に照らして街中を行くなら、その意義はとても意味深長である。段・章・馬・陳が国民を銃殺した上で、自分に敵対する者を指名手配するというのは、決して昨日今日の偶然事ではない。その醸成期間はすでに久しく、ようやくして樹人先生はその不思議な、妖怪を映し出す鏡を使って、様々な醜態をすべて照らし出すことができたのだ。結果はというと、鏡の中には章・馬だけでなく、異端の作家も映し出されており、街娼が大通りで客引きしているだけでなく、私娼が後ろで商売もしている。源流をたどれば、およそ章士釗が舞台に登場し、『甲寅』が発刊されて以来の復古反動の思潮がついに終結し、大成したと言えるだろう。学風を整理する意義もまた、ここに終結を迎えた。この長い歴史の中で、十八種の妖怪はいずれもその持ち分があり、各々の曲芸を持ち合わせている。明白なものであれ、暗々裏のものであり、我々は関わる必要はないが、街娼と私娼には元来どのような違いがあるのか? 一つは官僚であり、一つは正人君子というだけのことである。私は樹人先生の「発掘」を読んで深く嘆じざるを得なかった。北京の叭児狗(狆)がどうして忠と言えようか。ただ楽しいということで、妙齢の淑女とともにいっしょ街中に連れ出すことが格好いいというだけのことであって、いまだその大きな用途を知らない。

 陳任中の「未だそのことを聞かず」に至っては、自然の道理である。章士釗の公示(『京報』三月二十一日)は、すでに「自分の職分を越えて」、「他人の仕事に干渉すること」は都合が悪いことであると声明しており、陳任中は自ずから関係がないということになる。かつての天安門での国恥紀年会を禁止する教育部の指令が、悪賢い者による偽造であることは言うまでもない! 「これは誠に世の道徳とそれを守ろうとする人々の心の憂いである」(張之江の言葉)。幸いにして「数千年来」この方、「先聖の道術礼教に頼って人心が荒廃しないように維持してきた!」。私は「愚」の道術を愛しており、とりわけ「愚」の滑稽さを愛している。

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